見切りをつけられないのは

曲者を好きになったから

君待つと

ある日のこと。


昼休み、は学校の敷地内にあるベンチに座っていた。
その膝の上にはお弁当が乗っていたが、手は付けられていない。
そんなが見ているのは時計。

独り言を呟く。


「もう。一体何時だと思ってるんだろ、あいつ。」


清々しい風が木々の間を通り抜け、の髪をなびかせた。


「今日こそ先に食べちゃうからね!」


が怒ったように言った時、購買の方から走って来る人影がひとつ。
何やら両手にいっぱい食べ物を抱えている。


「わるい!遅くなって…、」

「遅い!」


走りながら大声で謝る人物に対して、は大声で返した。


「だから、ごめんって、」

「いっつもじゃない、桃は!」



と桃城は時々このベンチで一緒にお昼を食べる。
付き合い始めてからずっと続いている、日課のようなものだった。
時間を指定するのは桃城の方だったが、いつも遅れてくる。


「何でいつも遅れてくるのよ。」

「それは購買が、」

「『混んでるから』でしょ。だから時間をもっと遅くしようって言ってるのに。」

「いやー、それはいけねぇんだな。」


桃城はの隣りに腰を下ろしながら言った。


「何でよ?」


は先程までの怒りが治まっていないのか、強い口調で訊ねる。
そんなにひるむ様子も見せない桃城は、笑顔すら浮かべて答える。


「それは言えねーな、言えねーよ。」

「………。」


雰囲気を明るく変えようとしてか、桃城はいつもの決め台詞を口にした。
しかし、その一言が引き金となり、の怒りが爆発してしまう。


「もう一緒に食べない!」

「え? いきなりどうしたんだよ。」

「いきなりじゃないもん。桃がいっつも遅れてくるのがいけないんだから!」


は怒鳴りつけると、お弁当を手に取り、席を立って行こうとする。


「え!ちょっ、!」


桃城は慌てて呼び止めたが、は構わず行ってしまった。


…。」


ベンチに取り残された桃城は、一人仕方なく昼食を取り始めた。



吹き抜けるは爽やかな風。




一方、教室に戻ったは、お昼を食べている友人たちの輪に交ざりこんだ。


、どうしたの? 桃城くんと一緒に食べるんじゃ…、」

「あいつはもういいの!」

「「?」」


いつもと違い大声で言うに、友人たちは疑問を浮かべるしかなかった。




昼食後も休み時間もは、桃城の呼び掛けに答えようともしなかった。
授業中は、席が離れているため声は掛けられない。



そして放課後。

桃城はさっさと帰る用意をして、の席にやって来た。
もくもくと鞄に荷物を入れていくは、一度目を上げた後は無視している。


「なぁ、。」

「………。」

。」

「………。」

「…!」


大きな声を上げた桃城には、眉を顰めた顔を迷惑そうに向けた。


「何?」

「何でそんな怒ってんだよ。」

「言ったじゃない。」

「遅れてきたことだろ? だから、それは悪かったって。」

「もー、本当に分かってんの? 一人で待つのってけっこう寂しいんだよ。
 なのに桃は謝るばっかりで早く来てくれないし。せめて時間を遅くしようとしても嫌がるし。」

「…本当に悪かった。ごめん。」


桃城は、理由をはっきり言ってくれたに頭を下げて謝った。
その様子を見ていたは軽く息を吐いた。


「分かった。許してあげる。」

「サンキュー、!」

「その代わり、理由教えて。」

「何の?」

「時間を遅くできない理由。」

「……だから、それは言えねーって…、」

「何でよ! じゃあ、いつなら言えるの?」


強気で問いただしてくるに、桃城は余裕の笑みを浮かべて答える。


「そーだなぁ。が俺と結婚する時に教えてやるよ。」


の耳元で声を低めて囁く。
途端にの顔は赤く染まった。



(やっぱり、曲者だ…)


は心の中で呟いていた。

Fin.
2004.4.14

背景素材:

―――――あとがき―――――
おかしい…。何か最後、無理矢理甘くなってる!?(苦笑)
本当は2人に喧嘩してほしかったのに、ヒロインが一方的に怒ってますねー。
しかも短いです。すみません。でも、すらすら書けました。
基本的に私は待つ方で、待つのは苦痛ではありません。
でも、楽しみにしているのに毎回遅れて来られたら、怒りたくもなりますよね。
ヒロインはそんな感じです。ちょっとぶつけたくなったという。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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