楽しい時間をこれから一緒に
ふたりで  みんなで

ぴゅあぴゅあ

「たかしくん」
「あれ、ちゃん?」

昼休みのこと。
昼食を食べ終わり、クラスの友人と談笑している河村に訪問者があった。
隣りのクラスに在籍している
小学校からの付き合いだが、特別親しいわけではなく単なる同級生の一人だった。
その関係が変化したのは、ひと月程前。

「明後日の14日なんだけど、お家に行ってもいい?」
「俺の家に?」
「うん」
「もちろん、いいよ」
「ありがとう!」

笑顔で礼を述べると、は自分のクラスへと戻っていった。
が河村の家を訪れるのは、かなり久々だ。
河村が記憶を手繰り寄せてみると、小学校高学年の頃にクラスメイト何人かと一緒に一、二度来たきり。
友達を自宅に招くことには慣れている河村だが、彼女となると別だ。
何しろ、が初めての彼女。
彼女を自宅に招くのも初めてのこと。
先程はいつもの調子で返答したが、今頃になって河村の胸中に動揺が広がってきた。
けれど、それよりも嬉しい気持ちの方が大きかった。



***



約束の2月14日。
教室に着いた河村は、室内の様子がいつもと少し違う印象を受けた。
不思議に思っていると、クラスメイトが話しかけてきた。

「はよっ、河村!」
「ああ、おはよう」
「なぁ、お前もう貰ったか?」
「何をだい?」
「決まってんだろー、チョコだよ、チョ・コ!」

その言葉で、今日がバレンタインデーだと気付く。
今日はが家に来る日だ。
やっぱり、何か用意してくれているのだろうか。
そう考えると、胸が躍る心地がした。





帰り支度を終えた河村は、隣りのクラスへ向かう。
窓から覗くと、ちょうど帰り支度を終えたらしいがこちらに気付いた。
小さく手を振って席を立つ。

「たかしくんのクラス早かったんだね」
「まあね。どうする? このまま真っ直ぐ家来る?」
「そうしよっかな」
「よし、それじゃあ帰ろうか」





二人は一緒に階段を下りる。
その途中、不二と出くわした。

「タカさん、もう帰るの?」
「ああ、不二は部室かい?」
「うん、少しだけ顔出してくるよ」
「そうか、みんなによろしく言っといてくれよ」
「いいよ。じゃあ、タカさん、さん、また明日」
「明日な」
「うん、ばいばい」

テニス部では今年も、毎年恒例のバレンタイン暴露大会が開かれるのだろう。
普段は恋愛なんかどこ吹く風、テニス馬鹿と言われるくらい練習に打ち込んでいる部員たち。
だが、この日ばかりは浮かれ気分ではしゃいでしまう。
誰が何個貰ったか、聞いては騒ぎ、聞いては騒ぎ。
もちろん、全く興味を示さない者もいるが、いつもより部室は賑やかになった。

「たかしくんは部室行かなくていいの?」
「うん、今年はいいかな」
「今年?」
「あっ、いや、『今日は』だった、はは」

河村は思わず本音を出してしまい、慌てて訂正した。
昨年までは冷やかされる仲間たちを微笑ましく眺めていた傍観者だったが、今年は違う。
冷やかされる当事者になること必至だ。
バーニング状態ならいざ知らず、素のままでは遠慮したかった。
そんな河村の胸の内をは知らない。まだ少し不思議そうな顔をしていた。





「まだ寒いねぇ」

昇降口を出ると、冬の空気が2人を包んだ。

「そうだね……って、ちゃん、マフラーしてないじゃないか!?」
「朝急いでたから忘れちゃった」

えへへ、と笑う
その姿が可愛くて、河村は惚けそうになった。
だが、何とか堪える。

「ほら、これ使いなよ」

河村は自分の首に巻いていたマフラーを外すと、に差し出した。
がいつも巻いているふわふわマフラーには負けるが、ないよりは大分ましだ。

「えっ、大丈夫だよ」

遠慮しているのか、恥ずかしがっているのか、は首と手を横に振る。
その首もとは、やはり寒そうだ。

「いいから、巻いて」
「わっ」

河村は半ば強引にの首もとをマフラーで包む。
バーニング状態ではないのに、押しの強い自分が意外だった。
それは、に寒い思いをさせたくない一心だったのかもしれない。

「ありがとう……」

マフラーを巻き終えると、は少し小さな声で言葉を口にした。
どうやら、迷惑がってはいないようだ。
河村は安堵した。





「親父、ただいまー!」
「おう、隆、帰ったか!」

かわむらずしの店側の入り口から入る。
まだ、夜の開店前。
板場には、開店準備をしている河村父の姿があった。

「隆!裏から青い箱を……っおお!?」

帰宅した息子に早速手伝いを頼もうとした河村父だったが、その隣りに少女の姿を認めて驚きの声を上げた。

「た、隆、そのお嬢さんは……」
「あ、えっと、さん」
「こんにちは、です。お邪魔します」
「こりゃ、ご丁寧にどうも」

とりあえず、河村は名前だけの紹介をした。
が挨拶と共にお辞儀をすると、河村父も手を止めてお辞儀を返す。

「おい、隆、ちょっとこっち来い」
「うん。ごめん、ちゃん、ちょっと待ってて」

頷くを確認し、河村は板場の端に移動した。
河村父が内緒話をするように肩を屈める。

「何?」
「隆、お前、あのさんって子とどういう関係なんだ、彼女か?彼女なのか?」

河村父は些か興奮した様子で、早口で尋ねる。
河村も、こうなることはある程度予想していた。
一度だけ深呼吸をし、落ち着いて答える。

「そうだよ」

予想はしていたが、いざ口に出して伝えると照れくさい。
思わず、頬を小さく掻いた。

「そうか、そうか!よくやった、隆!よし、ご馳走を用意するから待っとけ!
さん、うちの隆を今後ともよろしく頼みます」

河村の肩を力強く叩いたと思ったら、に向き直ってお辞儀をした。
頭を掴まれ、河村も一緒にお辞儀をする。

「こっこちらこそ、よろしくお願いします!」

の声が河村の耳に届く。
照れくささと共に、温かい気持ちが胸に広がった。
気付かない内に口元が緩んだが、3人ともがお辞儀をしているおかげで、河村父にもにも気付かれることはなかった。





「じゃあ、ちゃん、ちょっと待ってて。部屋の中の物は好きに使っていいから」
「うん、ありがとう。頑張ってね」

河村は微笑みで応えると、部屋を出た。
バレンタインデーと言えど、開店準備を手伝わないわけにはいかない。
父が許しても、自分の心が許さない。

「親父、さっき言ってたのって、これだろ?」

河村が青い箱を抱えて板場に入る。
作業をしていた父の手元に目を遣ると、寿司が何貫も作られていた。
ご馳走を用意すると言ったのは、本気だったらしい。
河村は、父のこういう優しさが好きだった。

「おう!そこに置いといてくれ。手伝いはもういいから、さんの相手をちゃんとしろよ」
「えっ、まだ準備終わってないんじゃ……」
「四の五の言うんじゃねーよ。家に招待したなら、しっかりおもてなししろ」
「親父……」

河村は父の思い遣りを感じ、今回は折れることにした。
その分、明日はいつも以上に働こう。
そう決意した。

「ありがとう。じゃあ、部屋に戻るけど、忙しくなったらすぐ呼んでくれよ」
「おうよ!あ、ちょっと待て、隆。これ持ってけ」

河村父が出来上がったばかりの寿司を差し出す。
いつもながら美味そうだ。

「ありがたくいただくよ」
「夕飯前だからな、少な目にしといたぜ。男は胃袋からって言うが、美味いものに目がないのは女の子も同じだからな」
「へ?」
「可愛い子じゃないか、さん。離すなよ〜」

河村の脇腹をうりうりと肘でつつく河村父は、まるで中学生のようだ。
河村以上にテンションが高い。
との初顔合わせは予想以上に成功したようだ。
河村は明るい気持ちでが待つ部屋へと向かった。





「お待たせ、ちゃん」

河村父作の寿司盛り合わせを手に、自分の部屋へ入る。
一人待っていたは何をしていたのだろうかと目を向けると、河村が所持しているゲームに興味を持ったようだ。説明書を読んでいる。

「あっ、ありがとう……それは?」
「親父が2人で食べろってさ」
「うわぁ、職人さんの本格お寿司だね!美味しそう」

の目が輝いている。
父の言ったことはあながち外れていないのかもしれない。
お礼を言いに行こうとするを引き留め、早速食べることにした。

「う〜ん、美味しい〜」
「良かった。親父も喜ぶよ」

の幸せそうな顔を見て、河村も幸せな気持ちになる。
いつかは自分が作った寿司で、を幸せな気持ちにさせてあげたい。
河村は漠然とだが、確かにそう思った。



食べ終わった2人は、温かい緑茶を飲みながら一息つく。
ほんわかとした空気が広がる。

「そうだ!」

突然声をあげたかと思うと、は鞄の中を探り始める。
程なく、綺麗にラッピングされた包みをそっと取り出した。
両手の平に収まる程の大きさで、見るからにバレンタインデーのプレゼントだと判る。

「はいっ!バレンタインデー……おめでとう」
「あ、ありがとう……」

行動の潔さと言葉の躊躇い加減に若干のズレがある。
プレゼントを用意する、渡すという行為は抵抗なく出来るが、言葉にして伝えるのはどうも足踏みしてしまうらしい。
ただ、それでも伝えようとしてくれる気持ちが嬉しかった。

「開けていい?」
「えっ、だ、駄目!私が帰ってから開けて」
「そっかぁ、わかった」

残念に感じた河村だったが、楽しみは後に取っておく方がいいかとも思う。
が帰った後で、ゆっくり確かめることにする。

「そういえば、さっきゲームの説明書読んでただろ。興味あるならやってみる?」
「いいの!?」
「もちろんだよ。みんなでやるために持ってるんだから」

は嬉しそうな笑顔を見せる。
が興味を示していたゲームは何度も遊んだが、と遊んだらどんな楽しさがあるのだろう。
河村もわくわくしてきた。
ゲームの用意をしようと腰を上げた、その時。

「おーい、隆ー!ちょっと降りてこーい!」

階下から河村父の声がかかった。
手伝ってほしいことができたのかもしれない。
に断りを入れ、店に向かう。



「親父、何を……」
「タカさん、やっほ〜!」
「こんちはっす!」

店に出た河村の耳に飛び込んできたのは、聞き慣れた明るい声。

「英二!桃!……に、越前、大石?」
「ちはっす」
「大勢でいきなり悪いな」
「いや、それは別に構わないけど、みんなでどうしたんだ?」

仲間たちの突然の訪問に驚いていると、スッと河村の前に出て来る人物がいた。

「ごめんね、タカさん。僕が余計な一言を言っちゃったみたいなんだ」
「不二……」

申し訳なさそうに話す不二が、河村には珍しいものに映った。
不二はデータマンではないが、彼が意図したのと違う方向に物事が進むことはあまりないように思っていた。
そんな不二が余計な一言を言ってしまうとは、本当に珍しい。

「ま、まあ、立ち話も何だから、俺の部屋へ行こう」

河村の先導で、菊丸、桃城、越前、大石、不二、乾の6名は部屋へと向かう。
詳しい話はそれからだ。
部屋の戸を開けると、がパッと顔を上げた。

「お疲れ様、たかしくん、……と菊丸くん?」

戻ってきた河村の横に菊丸を見つけ、の顔に疑問符が浮かんでいる。
その後ろにまだ5人もいると知ったら、その驚きは如何ほどか。

「どもども〜。お邪魔するよ〜ちゃん」
「あ、どうぞどうぞ」

遠慮なく部屋にあがる菊丸をが招き入れる。
まるで自分の部屋のように振る舞うが面白い。
河村は小さく笑ってしまった。

「やぁ、さん、さっきぶり」
「不二くんも来てたんだ」
「もっといるよ」
「もっと?」

不二に続いて、大石と乾が足を踏み入れる。

「大勢で押しかけちゃってごめんよ」
「大石くん!?」
「君とは初対面かな。さん」
「あ、うん、話すのは初めて……」
「乾貞治だ。よろしく」
です。こちらこそ、よろしくね」
「先輩、俺たちも自己紹介していいっすか?」

乾の背後から顔を覗かせた桃城が、河村に伺いを立てる。
その腕は、どさくさに紛れて帰ろうとする越前をしっかり掴んでいた。
当の越前は、迷惑そうな顔を隠そうともしていない。
どこにいても、こいつらは変わらないようだ。

ちゃん、こっちが2年の桃城。その横にいるのが1年の越前」
「初めまして!桃城武っす!」
「初めまして、です」
「ほら、越前も挨拶しろよ」
「痛いっすよ、桃先輩。……越前リョーマっす」

渋々といった様子で、越前が自己紹介をする。
一連の流れを見ていたは、一拍置いて小さく吹き出した。
から見ても、面白い奴らなのだろう。
河村は何故か嬉しかった。

先輩?」

だが、初対面の相手にいきなり笑われた形の当人たちは、困惑しているようだった。

「ごめんね、いきなり笑っちゃって。よろしくね」
「こちらこそ、よろしくっす!」

ひとしきり挨拶が終わったところで、河村はみんなに席を勧めた。
それぞれが思い思いに座る。

「けどさー、タカさんも水くさいなー。彼女ができたこと黙っとくなんて」
「そうっすよ、河村先輩!俺たち、今日初めて聞いたんすから」

案の定、菊丸と桃城が先陣をきる。
河村の部屋にがいることに対して何も訊かないと思ったら、既に知っていたらしい。
おそらく、これが先程不二の言っていた余計な一言と関係しているのだろう。

「ごめん、隠すつもりはなかったんだけど、言うタイミングがなくて」
「わかるよ、タカさん。タイミングは大切だよな」
「大石……」
「だが、今日部室に来なかったのは、標的になるのを避けた可能性100%だ」

乾に図星を差され、河村は笑うしかなかった。
の方に目を遣ると、何かを納得したような表情になっていた。
学校での会話を思い出しているのだろう。
河村と目が合うと、微笑みを浮かべた。心中を察してくれたらしい。

「あ!何、2人で微笑み合ってんだよ〜。幸せなタカさんには……くすぐりの刑〜!」
「うわっ、ちょっ、英二っ!」
「ほら、桃とおチビちゃんも協力しろ〜」
「了解っす!」
「ははっあははっ!もう、やめっ」
「俺は遠慮しときます」
「もー、おチビは乗り悪いなぁ」

河村は菊丸と桃城にくすぐられ続ける。
そんな河村を見兼ねたのか、大石が救いの手を差し伸べる。

「はい、タカさん、ラケット」
「ぬどりゃぁぁあ〜〜!くすぐりなんて、問題ナッシングーー!!」

バーニング状態となってしまった河村の姿に、は目を輝かせている。
変わった反応に、テニス部メンバーの方が驚いてしまう。
不二が代表して確認する。

さん、バーニングタカさんを見て、引いてないの?」
「なんで?すっごくかっこいいよ!」

強者だ!?
根拠はないが、河村を除く6人はそう感じた。

「恋は盲目、というやつか。新たにさんの項を設ける必要があるな」
「それって、データテニスに役立つのかい?」
「間接的に」
「ふーん。まとめたら僕にも今度教えてよ」
「いいだろう。今、この場にいられるのも不二のおかげだしな」
「やった!」

乾と不二の間で密約が交わされている時、河村はバーニング状態のままを引き寄せていた。
そのままの肩を抱き締め、宣言する。

「みんな!この子が俺の彼女のちゃんだ!泣かせたら容赦ナッシングーー!!」
「おー!」
「えっ、ちょっ、たかしくん、みんな、静かに……」

大声で盛り上がるテニス部メンバーに慣れていないが焦っている。
盛り上がりに参加していない越前が、小さな溜め息を吐きながら静かに立ち上がった。
河村にスッと近付くと、その手からラケットを奪い取る。

「あ、あれ?……うわぁっ!ご、ごめん、ちゃんっ」

勢いに任せて肩を抱いていたことに気付き、河村は慌てて手を離した。
バーニング状態は、どうしても気が大きくなってしまう。

「ああっと、ほら、せっかくみんながいるんだし、さっき言ってたゲームやろう!」
「うん!」
「俺、これやりたい!」
「英二先輩、こっちの格闘技ゲームやりましょうよ」
「えー、それだと桃の一人勝ちじゃん」

菊丸たちは早速、ゲームの話で盛り上がる。
河村は部屋の主として、大石は青学の母として、彼らの収拾に忙しくなった。



さん」

を呼んだのは不二だった。
賑やかな輪の中に入るつもりはないらしい。

「何?」
「改めてお詫びしとこうと思って」
「お詫び?」
「うん。僕が部室で余計な一言を言っちゃったせいで、せっかくの2人の時間を邪魔しちゃったから」
「そんなの全然気にしてないよ。渡したい物はちゃんと渡せたし」
「そう?」
「うん。でも、余計な一言って、何を言ったの?」
「ほら、帰る時に階段で君たちに会っただろ。それをみんなに話しちゃったんだ。なんで部室に来てないんだろうって話になってね」
「そうだったんだ。それだと、普通のことだと思うんだけど。だから、気にしなくていいよ」
「そうかい?ありがとう」
ちゃん!ゲームやるよー!」
「あっ、はーい!」

河村の呼び掛けに、が話を切り上げて向かう。
その姿を見送る不二の横に、いつの間にか乾がいた。

「不二、肝心なことは謝罪できなかったようだな」
「乾は気付いてたんだ?」
「まあな。お前が口を滑らせて余計な一言を発するとは考えにくい。菊丸たちを河村宅へ押しかけさせるのが目的だったんだろ」
「ちょっとした悪戯心だったんだけどね。タカさんもさんも良い人過ぎて、悪いことしちゃったなぁって」
「ま、この程度のこと、別にいいんじゃないか?これから、あの2人は2人っきりの時間をいくらでも過ごせるわけだしな」
「そうだね。じゃあ、今回の突撃訪問は少し迷惑なお祝いってことにしておこうかな」
「不二先輩、やっぱり腹黒いっすね」
「僕が?」
「自覚ないんすか?」
「どうだろう」

越前の鋭い指摘を不二はさらりと流した。

「越前!不二先輩!乾先輩も何やってんすか。ゲームやりましょうよ!」
「今行くよ」
「俺はいいっす」
「越前、河村の持っているゲームは面白いぞ。是非やろう」

結局、いつものようにみんなでモノポリーをすることになった。
も楽しそうに笑っている。
河村はこのテニス部の輪の中にがいることが嬉しかった。
彼女の存在がみんなに受け入れられたように感じる。
中学で自分のテニス人生は一旦終わる。
高校からは部活で大会に出ることはなくなるからだ。
だが、こいつらとの、青学テニス部で一緒に戦ってきた仲間との繋がりは、これからも続いていくだろう。
同じように、との繋がりも続いていく、続けていきたい。
どちらも河村にとっては大切なものだ。
そのどちらもが今、目の前でひとつに繋がった。

「ねぇ、たかしくん、この時はどうしたらいいの?」
「ああ、これはこっちにこれを動かして……」
「タカさん、ちょっ、タンマ!」
「待ったなしって言ったの、英二じゃないか」
「だってぇ……不二〜ヘルプ〜」
「いいけど、Ponta一本ね」
「おチビみたいなこと言うなよー、じゃあいい!大石〜」
「タカさん、ラケット」
「にゃっ!大石!?」
「ぬどりゃぁぁあ〜!待ったなしのバーニング王手ーー!」
「タカさん容赦ないにゃ〜」

賑やかな笑い声が部屋中に広がった。
2人きりの甘いバレンタインデーにはならなかったが、こんなバレンタインデーもいいかと思う。
中学校生活最後のバレンタインデーは、賑やかで楽しかった。

Fin.
2013.2.14

背景素材:10minutes+

─────あとがき─────
初タカさんで、バレンタイン記念夢です!
でも、甘くない……。レギュラー陣が出張り過ぎ……。
そして、不二さんが微妙に黒いですね(笑) 黒いっていうか、意地悪。
彼女ができたタカさんにちょっとしたジェラシーを感じていたのでしょうか。
タカさん宅に押しかけたメンバーに手塚と薫ちゃんがいないのは、どう考えてもこの二人は来ないと思ったからです。
リョマも来ないと思いましたが、桃と英二に無理矢理引っ張られてきそうだなぁと(笑)
大石は無論、保護者として(え) 乾はデータ集めに。不二さんは言い出しっぺですから当然。
タカさんとの甘々展開はなかなかに想像し難く、今回は回避しました。
ただ、タカさんはとにかく彼女に優しいと思います!フェミニスト!
次回は、その辺りから甘々やラブラブなお話を書きたいな、と。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。

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