私の想い 彼の想い

伝えたいもの 綺麗なもの

陽の光に照らされて ―girl's side 2―

翌々日。

私は男テニの練習を見学しようとコートに向かっていた。

男テニのコートに行ったことはあまりない。
練習の邪魔になるんじゃないかな、と思うと遠慮しちゃって。
でも、今日は不二くんの誘いもあるし! と楽しみにやって来た。

水飲み場まで来ると、突然声を掛けられた。


さん!」

「あ、不二くん。」


不二くんに会う度に嬉しくて笑顔になる。


「見に来てくれたんだ?」

「うん。用事もなかったし。それにしてもすごいギャラリーだよね。」

「んー、そうかな。いつもと同じだと思ってたけど。」

「あはは。男テニの普通なんだ、この多さは。」

「でも、近頃は増えてきたかな。みんな活躍してるからね。」

「そうだよねー。スーパールーキーもいるみたいだし。」

「越前のことだね。さんも注目してるんだ?」

「やっぱり、噂になってるしね。」

(でも、一番見たいのは不二くんなんだけど)

心の中ではそう付け足していた。


「集合!!」

手塚くんの声が響いた。


「じゃあ、もう行くね。あ、話したいことがあるから、終わったらここで待っててくれないかな。」

「うん、いいよ。見ごたえあるから最後まで見てると思うし。」


不二くんは他の部員に混じってコートへと向かった。
私は少し後れてコートに着く。
既に練習は始まっていた。



1年生ルーキーも気になっていたはずなのに、気付くと不二くんばかり見ていた。
そんな中で時折不二くんと目が合う。
その度に私の胸は早鐘を打つのだけれど、顔には嬉しさを表す笑みが浮かぶ。




実は今日、少しの自惚れと少しの確信と大きな決意でこのコートにやって来た。


一昨日、不二くんと久しぶりに会った時に分かったことと決意したことがある。

分かったことは、本当に不二くんのことが好きなのだという気持ち。
この微笑みの近くにいたい、そう強く想った。

決意したことは、この大切な気持ちを伝えること。
不二くんは、きっと私のこの気持ちを知らないから。

知ってほしい。

たとえ、受け入れられなくても、知ってもらえるだけで私のこの気持ちは輝くから。
「伝えよう。」と思わせてくれた、あのオレンジの陽の光に照らされたように。



少しの自惚れと確信。



それは、不二くんの気持ち。
誘ってくれたってことは好意を持ってくれてる、って思っていいよね。
少なくとも嫌いな人には言わないだろうから。




気持ちを噛みしめていると、部活が終わった。
約束した通り、水飲み場の近くで不二くんを待つことにした。



あの日と同じような陽の光を浴びながら、胸が早鐘を打つ。
友達が帰っていく姿を見つける度に手を振り合うけれど、早鐘は収まらない。
それでも、オレンジの陽を見つめている内に覚悟が決まってきたみたい。

ふと横を見ると不二くんがこっちを向いて立っていた。


「あ、不二くん。」

「ごめんね。待たせちゃって。」


不二くんが駆け寄って来る。


「ううん。そんなに待ってないよ。」

「そうなんだ、よかった。それで、話したいことなんだけど…。」

「うん。」




さんが好きなんだ。」




不二くんが私の瞳を見て告げた。



「え、」



突然の告白に驚く。

けれど、この瞬間、私の自惚れが自惚れではなくなった。
それを自覚した私は一瞬驚いた後、不二くんに笑顔を向ける。
とにかく、自分の気持ちを伝えなきゃ、と思った。


「知ってたよ。」


思わず発したのはそんな言葉。
そりゃ、不二くんも驚くよね。貴重な表情が見られて得しちゃった。


「知ってたっていうより、気付いてたっていう感じかな。」

「何を?」

「不二くんが今日告白してくれること。」

「え。そんなに分かりやすかったかな。」

「だって、『話したいことがあるから待ってて。』なんて、相談か告白くらいでしょ。」

「ああ、確かに…。そうだね。」

「相談か告白かまでは絞れなかったんだけどね。―――告白で嬉しかった。」

「!?それじゃぁ…」



「ありがとう。私、不二くんが好きだよ。」



とうとう言ってしまった。
口にした途端、気恥ずかしさが込み上げてきて、思わず不二くんから目を逸らしてた。
きっと、顔が赤い。


さん。」


不二くんに呼ばれたと思ったら、両手を掴まれた。
胸の早鐘が一際大きく鳴った。
驚いて勢い良く不二くんを見上げる。


「帰ろうか。」

「……うん。」


あんまり優しく言われるもんだから、照れて小さくしか答えられなかった。
陽の光に照らされて優しく微笑む不二くんはとても綺麗で。
私も笑顔になった。


「どうしたの?不二くん。」


何か考え込んでいるみたいだったから、そう尋ねる。


「ううん、何でもないよ。あ、いつか話すと思うけどね。」


不二くんはそう言って私の手を離し、2人並んで歩き出した。


「んー。今はだめなの?」

「うん。」


不二くんは笑顔で答える。


「分かった…。あ、じゃあ…私のどこが好きになったのか教えて?」

「それも今は教えないよ。」

「どうして?」

「だって、僕たちは今始まったところなんだ。これから、色々なことを話してお互いを知っていくんだから。
 楽しみはとっておいた方がいいよね。」


でも、そう言って不二くんが私の顔を覗き込むから、思わず顔を背けちゃった。


「………うん。そうだね。」


ぽつりと、だけどちゃんと自分の気持ちを伝えられた。


。」

「え。」

「これからは、こう呼ぶからね。」

「…うん。」


突然名前を呼び捨てにされて驚いたけど、嬉しかった。
不二くんの特別なんだっていう象徴のようで。

嬉しさを噛みしめると、笑顔になる。
隣に不二くんが居てくれるからだね。


、一つだけ教えてあげようか。」

「うん!何、なに?」

「次の日曜日、は僕とデートだよ。」

Fin.
2003.12.7

背景素材:

―――――あとがき―――――
書く暇がなく、書き始めからとても時間が経っています。
不二さんサイドともシンクロしないといけないので、ちょっと難しかったり。
でも、不二さんサイドで書き切れなかった部分が少し書けていると思うので、よかったです。
ヒロインサイドは初めてということで、少し戸惑いましたが如何でしたでしょう?
ヒロインの気持ちが皆さんに少しでも伝われば嬉しく思います。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

Back

夢小説[青学]頁へ戻る

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送